アップルには専任の哲学者がいる

アップルには専任の哲学者がいる

哲学者であり、Appleの特別シニアフェローであるジョシュア・コーエン氏は、2011年にApple Universityの教授陣に加わった。時折、外部で講義を行っているものの、氏の研究内容は機密とされており、Appleは氏へのインタビューを拒否していると報じられている。

スタンダード大学の元政治哲学教授、ジョシュア・コーエン氏は、2011年からアップル社で哲学者として勤務している。彼は最終的にアップル大学にフルタイムで勤務し、その後アップル社の特別シニアフェローに就任したが、彼の研究は社外ではほとんど知られていない。

コーエン氏へのインタビューを試みたビジネスニュースサイトQuartzは、Appleがコーエン氏へのインタビューを拒否したと主張し、同社が哲学に関するオープンな議論に反対していると結論付けている。しかし、Quartzはコーエン氏がAppleの社外で頻繁に講演を行っていることを認めており、LinkedInのプロフィールには2011年入社と記載されているものの、実際には2014年に採用されたとしている。

「Apple Universityについて、私たちが知っていることは次のとおりです」とQuartzは報じています。「この施設は極めて秘密主義です。2014年に数人の従業員が匿名を条件にニューヨーク・タイムズ紙に語り、Apple製品の「優雅なシンプルさ」がピカソの作品に匹敵することを学んだと語っています。」

Apple Universityは社内研修プログラムです。企業が独自の研修プログラムを設けるのは一般的ですが、このプログラムは2008年にスティーブ・ジョブズによって設立されました。AppleInsider同年の立ち上げについて報じ、このプログラムは通常のMBAプログラムになる可能性があり、既に有名なPixar Universityを一部ベースにしていると説明しています。

2011年までにApple UniversityはAppleの確固たる一部門となり、AppleInsiderは、元イェール大学学長のジョエル・ポドルニー氏をはじめとする上級学術研究者がスタッフとして採用されていると報じました。同記事では、Apple Universityの目的は「先見の明のある創業者の思想を内面化し、彼が亡くなった日に備えておくこと」だと述べられています。

現在、Apple University には教育訓練プログラムのほかに哲学科もあるようです。

哲学者のジョシュア・コーエン氏はQuartzに話す権限を与えられておらず、Appleでの日々の仕事について他の誰にも直接話したことがありません。しかし、Quartzによると、Apple以外での彼の講演の一部は関連しているとのことです。

「例えば、2016年にはトロントで講演を行い、ピアニストのグレン・グールドがテクノロジーを取り入れることで、より崇高な音楽を生み出し、より幅広い聴衆と共有できるようになったと説明した」とQuartzは述べている。「聴衆の中にいた音楽ウェブサイトludwig-van.comのライターによると、これはコーエン氏がもともとアップルの社員向けに行っていた講演のアレンジ版だったという。」

ジョシュア・コーエンが2016年に音楽家グレン・グールドの「ヴァリエーションズ」について講義している様子。(出典:ロビン・ロジャー)

ジョシュア・コーエンが2016年に音楽家グレン・グールドの「ヴァリエーションズ」について講義している様子。(出典:ロビン・ロジャー)

その音楽サイトの2016年のレポートには、さらに詳しいことが書かれている。「(Apple Universityにおける)コーエン氏の任務は、最高のものを特定し、それを説明することだ」とレポートには書かれている。「『人類が成し遂げた最高のものに触れ、それを自分の仕事に取り入れなさい』というのがジョブズ氏のアドバイスだった」

コーエン氏は、1991年から携わっている政治・文学誌「ボストン・レビュー」の編集者でもある。アップル社内での講義に加え、学術研究にも取り組んでいるようだ。しかし、どの大学教授にとっても、自分の専門分野で定期的に論文を発表することを目指すのは当然のことだ。

Apple UniversityはAppleにとって依然として秘密主義的な機関であり、カリキュラムの詳細や受講生の情報は公表されていない。しかし、専任哲学者のポストは公表されていないものの、決して秘密裏に運営されているわけではなく、そのポストに就いた人物がAppleの社外で働くことを妨げられているわけでもない。