サムスンは、Apple A9のライバルであるExynos 8で再び「追随によるリーダーシップ」を主張している。

サムスンは、Apple A9のライバルであるExynos 8で再び「追随によるリーダーシップ」を主張している。

サムスン電子は、同社初のカスタム64ビットARMv8 CPUコアと同社独自のモバイルベースバンドを同一パッケージに統合した新型Exynos 8 Octaチップを発表しました。しかし、この新型チップはリーダーシップを主張しながらも、パフォーマンスではAppleに後れを取っています。

Samsungの既存のハイエンドチップであるExynos 7 Octa(8コア)は、同社の主力製品であるGalaxy 6S Edgeに既に搭載されています。1.66GHzのクロック周波数と3GBのRAMを搭載し、少なくともマルチコアスコアでは、AppleのA9搭載iPhone 6sおよび6s Plusに匹敵するベンチマークスコアを記録しています。

シングルコアのスコアでは、Samsungの現行チップは大幅に劣ります。A9のシングルコア性能により、AppleのエントリーレベルのiPhone 6sは、プレミアム価格で限定販売のGalaxy S6 Edgeに搭載されているSamsungの最速Exynos 7チップよりも90%以上高速化します。

マルチコア性能が活用されるのはベンチマークテストにおいてのみであり、スマートフォンはほとんどの場合、シングルコア性能に依存しています。そのため、コア数が多すぎると、コアをアイドル状態にするか、バッテリー寿命を犠牲にしてアクティブにするかのどちらかを選ばざるを得なくなり、デメリットとなります。Appleの2コアチップは、1コアのみを使用している場合でも高速なパフォーマンスを提供し、ピーク時には市販の8コアチップと同等、あるいはそれ以上のスコアを実現します。また、Appleは小型軽量のバッテリーパッケージを使用していても、バッテリー寿命を延ばすのが容易です。

Exynos 8にとっては小さな飛躍、A9にとっては大きな飛躍

サムスンは次期Exynos 8を搭載した製品をまだ出荷していないが、プレスリリースではこのチップを「次世代モバイルデバイス向けの最先端アプリケーションプロセッサ」と宣伝している。Appleは、A9は30%の性能向上を謳うのではなく、CPU性能が70%、GPU性能が90%向上すると述べている。

しかし、プレスリリースでも、サムスンは自社製の第 1 世代 64 ビット コアを搭載しているにもかかわらず、既存の Exynos 7 Octa アーキテクチャと比べて「パフォーマンスが 30 パーセント向上する」ことしか期待していないと指摘されています。

サムスンはこれまで、クアルコムと同様にARM製のストックコア設計を採用してきました。Appleは2012年(訂正:2013年)にA7で初の64ビットコアを発表し、業界を驚かせました。現在は第3世代の64ビットアーキテクチャを採用しています。

また、Apple は、パフォーマンスが 30 パーセント向上したと宣伝するのではなく、A9 は以前のチップに比べて CPU パフォーマンスが 70 パーセント高速化し、GPU が 90 パーセント高速化したと述べています。

「私たちは市場のリーダーとして、市場のトレンドを追っています」

昨年、サムスン幹部の李仁鍾氏はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、サムスンでは「市場リーダーとして、市場のトレンドに追随している」と奇妙な主張をしました。それは、市場初であると主張する技術を追随的に提供しているというものでした。彼は、アップルのTouch IDに追いつこうとするサムスンの取り組みについて語っていました。

その1年前の2013年には、サムスンのシステムLSI部門社長であるナムソン・スティーブン・ウー博士も、64ビットのモバイルチップにおけるリーダーシップを主張した際に、時間とシーケンスに関する奇妙な解釈を示した。

彼は、Apple が A7 を発表してから 1 年後(訂正:数か月後)、Samsung の 64 ビット アプリケーション プロセッサの顕著な不足という問題について、同社の投資家に直接語りかけていた。

「多くの人が『モバイルデバイスになぜ64ビットが必要なのか?』と考えていました」とウー氏は述べ、サムスンが追いつくための2つの戦略を概説した。まずARMの汎用コアリファレンスデザインを使用し、次に独自のカスタム64ビットコアを搭載したチップを提供するという戦略だ。

「64ビット製品の開発は着実に進んでおり、少し時期尚早ではありますが、64ビット製品に関しては既にリーダーグループに名を連ねていると考えています」と彼は主張した。しかし、64ビット化に向けた彼の第二段階は、2年後の2015年にようやく生産開始を迎えたばかりで、A7から3年(訂正:2年以上)も遅れている。


Exynos 8 Octa は、処理能力が 30 パーセント向上したとしても、たとえサムスンがこれまでと同じ高いクロック速度とより多くの RAM を維持したとしても、概念的には、Geekbench スコアで、既存の iPhone 6s モデルよりもシングル コア パフォーマンスが約 48 パーセント高速になります。

しかし、Appleには独自の魅力的なチップ、A9Xがあります。シングルコア性能はExynos 8 Octaのほぼ2倍ですが、iPad Proに搭載されているExynos 8 Octaはコアが2つしかありません。A9Xは、Samsungのモバイルチップよりも高速なだけでなく、モバイルハイブリッドタブレットとラップトップ向けに設計されたIntelの一部プロセッサよりも高速であることでも注目を集めています。

サムスンのその他の問題

もちろん、サムスンは最新のチップをまだ実際に出荷していません。特定の目標や機能を達成しようとすることと、それらの計画を実行することは同じではありません。サムスンは、Galaxy S5でTouch IDに初めて挑戦した際に、このことを経験しました。その際、指紋認証機能は性能が劣っていましたが、レビューでは問題が多く、奇抜だと酷評されました。サムスンは、生体認証センサーにおいて「追随することで先導する」という方針に沿って、指紋認証機能も同時に提供しました。


しかし、サムスンは自社チップ設計特有の欠陥を抱え、プロセッサにも問題を抱えてきました。例えば、Galaxy S4の一部バージョンでは自社製のExynos 5 Octaチップを搭載していました(ただし、ほとんどのバージョンではQualcommのSnapdragonプロセッサを搭載していました)。

メディアがサムスンの Exynos 5 のプレスリリースを大々的に取り上げ、アナリストが自社製チップを使用することでコストを大幅に削減し、競合が困難になると主張した一方で、Exynos 5 はAnandTech が「CCI-400 コヒーレント バス インターフェースの実装が不完全」と表現した問題を抱えており、「消費電力 (およびパフォーマンス) の観点から深刻な影響」を及ぼしている。

このニュースはあまり注目されなかったが、その理由の一つは「ARMもSamsung LSIもバグについて公に語らず、Samsungも当初は問題を認めなかったため、エンドユーザーが自ら発見することになった」ためだ。

また、このチップを搭載したサムスンのギャラクシーS4モデルは、ハードウェアのバグ修正にかかるコストを考慮に入れても、製造コストが下がるどころか、むしろ高くなることが判明した。

サムスンの最新フラッグシップモデル、Galaxy S6 Edgeは、Exynosチップのみを採用したようだ。しかし、これは別のチップトラブルが原因だった。クアルコムが最初の64ビットチップを深刻な欠陥と遅延なしに提供できなかったのだ。クアルコムのチップ業界における地位を考えると、サムスンが完璧な発売を実現できるかどうかは、必ずしも明るい兆しとは言えない。

サムスンは、自社の携帯電話用チップに関して、他にも問題を抱えている。たとえAppleのAシリーズと同等の速さでチップを開発・出荷できたとしても、メモリとプロセッサリソースを大量に消費することで悪名高いAndroidへの依存によって、サムスンは足かせをはめられることになるだろう。

SamsungのGalaxy S6(および他のほとんどのAndroidスマートフォン)は、フルディスク暗号化が無効の状態で出荷されました。これは、AndroidのFDEがメモリパフォーマンスを50~80%も大幅に低下させるためです。最近のAndroidスマートフォンのほとんどは、2008年(訂正:2009年)のiPhone 3GSが搭載していた暗号化を処理できるほど高速ではありません。これはハードウェアの欠陥とGoogleのソフトウェアの欠陥が一部原因です。最近のAndroidスマートフォンのほとんどは、2009年のiPhone 3GSが搭載していた暗号化を処理できるほど高速ではありません。

モバイル プラットフォーム上のビデオ ゲームの詳細なレビューでは、「iPhone ゲームは、テストした Android ゲームの約 4 分の 1 の RAM を使用する」とも指摘されています。一方、超高解像度ディスプレイの使用を含む Samsung 独自の貢献により、特にプレイ可能な状態を維持するために解像度を単純に下げることが多いビデオ ゲームでは、実際のメリットが得られずにプロセッサにさらなる負担がかかっています。

Androidの問題に加え、サムスンは自社のサービスやアプリにも深刻で容易に悪用されるセキュリティ上の欠陥を追加しています。Googleはサムスンの最新Galaxy S6 Edgeの修正に協力し、1週間以内に「相当数の深刻な問題」を含む11件の脆弱性を発見しました。

もちろん、サムスンにとって最大の問題は、2つの戦線で競争している点です。ハイエンド市場ではAppleがますます多くのシェアを占める一方で、中国の地域メーカーがサムスンの量産出荷を奪い、中低価格帯では価格を押し下げています。こうした市場ポジションでは、Exynos 8 Octaのような高性能チップに注力することは事実上無意味です。なぜなら、サムスンはこれらのチップを搭載した高価なスマートフォンの多くを販売するのに非常に苦労しているからです。

対照的に、Apple が販売する iPhone の大部分は最新モデルであり、大規模な経済規模が生み出されてコストが下がり、さらに高速でより洗練された次世代の A シリーズ プロセッサの資金が調達される。